マンホールポンプコントローラ SC350/SC350-IF 外部仕様書
Ver5.4
2024/04/08
小松電機産業株式会社
1. はじめに
本製品は、クラウド方式総合水管理システムやくも水神マンホールポンプコントローラSC350/SC350-IFについて記述されます。
2. 注意事項
設置にあたっては一般仕様の範囲内でご使用ください。特に次のような内容にご注意ください。
a. 設置場所
- 振動、衝撃のない場所に設置
- 周囲温度・湿度が仕様の範囲内であっても、その変化の激しい所は避ける
- ホコリや昆虫、腐食性ガス、水、油などが装置内に入ると故障の原因となるため注意
b. 電源
- 取付、保守、修理などの場合には、必ずブレーカなどの元電源を切って作業
- 長期間電源を入れずに放置する場合、結露により故障する可能性があるため、設置後は必ず電源を投入
c. アンテナ
- LTEアンテナを設置する際には、事前に必ず電波状態を確認の上設置
- 電波状態が悪い場合、誤動作の原因となる
- アンテナはドコモ純正品を使用
e. アース
- 必ずアースラインを接続し規定の抵抗値以内であることを確認
- 接続されない場合は、雷サージ等のノイズに対して弱くなる
f. 安全措置
本商品は通信機器です。何らかの原因で通信不能に陥った際の2次災害については、一切の責任を負いません。人身事故や重大な拡大損害に発展することが予測される用途にご使用の場合は、二重安全機構等の安全対策を組み込んでください。特に遠隔操作をご利用になる場合、現地制御回路、運用等による安全措置を必ず施してください。
3. 概要
マンホールポンプコントローラは電源・情報を司る電源情報部(SC350)と入出力部(SC350-IF)をセットで使用します。
4. 製品仕様
4.1. 一般仕様
4.1.1. 電源情報部SC350
一般仕様
項目 | 名称 | 適用 |
---|---|---|
電源 |
AC85V~AC260V 入力 (避雷回路内蔵。高性能避雷器内蔵タイプあり、発注時指定) 停電時は自動検知し通報 バックアップバッテリーへ自動的に切り替えて水位等監視動作を継続 電源断後、標準1分間欠監視12時間、 ・2分毎間欠監視24時間バックアップバッテリーを5個並列増設 ・最大7日間監視継続可能 バックアップバッテリー:リン酸鉄リチウムイオン LiFePO4 電池、 12.8V/3600mAh。メンテナンスフリー(点検時期10年推奨) ※上記は、当社標準盤で2線式投込水位計制御の場合のものです。 停電時の入力状態により変動します ※異常高温時にはバッテリー保護のため電源断通報後、 バックアップを停止します |
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使用条件 |
周囲温度 0~50℃ 湿度 20~85%RH(結露無きこと) |
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外形寸法 |
W174×H174×D69(板金ベース部除く)、 W196×H175×D37(板金ベース部) |
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消費電力 |
最大消費電力約50VA(バッテリー充電中)、 通常約14VA (入出力部SC350-IFの電源用電力を含む) |
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重量 | 1.8kg(取付金具、バッテリー含む) |
通信仕様
項目 | 適用 |
---|---|
携帯パケット網通信 | NTTドコモ LTE-M(LTE Cat.M1) 128kbps |
省配線通信 |
RS485通信,DC電源出力付、 入出力部(SC350-IF/SC350-IF)接続専用 |
PLC拡張通信(オプション) |
RS232C、19200bps PLC通信用 拡張アナログ入力最大8点、拡張ディジタル入64点、拡張ディジタル出力8点 |
入出力仕様
項目 | 名称 | 適用 |
---|---|---|
入出力 | 停電保障デジタル入力 |
ドア開閉信号、電源異常(電圧低下/欠相/逆相)、 避雷器故障、予備1 無電圧接点入力、停電補償(1秒間欠入力) |
リレー出力 |
AC250V/0.5A をオンオフ可能なa接点出力4点 (出力1:ファン出力、出力2-4:なし) |
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表示 | 有機EL画面 | 16文字2行の有機EL表示。ドア閉時および長時間無操作時消灯 |
LED |
電源(緑)、警報(赤)、通信(赤/緑)、保守(赤)、 自動(緑)、手動(赤)、 1号(緑)、2号(緑)、 IOモニタ(緑)、設定モード(緑) |
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操作 | 操作スイッチ | 自動/手動切替、1号運転、2号運転、表示切替、警報表示 |
非常運転SW |
各ポンプ運転用電磁接触器を 強制的にオン・オフするスイッチ。 AC250V/0.5A 2台運転許可・禁止は工場出荷時設定。(要指定) |
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保守 | USB | 保守用。ドアスイッチに連動してDC5V1Aを出力 |
ブザー | 内蔵 | |
カレンダ | 電源投入時及び毎日サーバーと自動的に時刻合わせ |
4.1.2. 入出力部SC350-IF
仕様
項目 | 名称 | 適用 |
---|---|---|
使用条件 |
周囲温度 0~50℃ 湿度 20~85%RH(結露無きこと) |
|
外形寸法 | W168×H62×D128 | |
電源 | DC11~24V、1.0Amax | |
消費電力 | 約10VA(SC350から電源供給されます) | |
重量 | 0.7kg | |
入出力 | デジタル信号入力 |
・フォトカプラ入力16点(無電圧接点入力) 1号ポンプ漏電/過負荷、ブレーカ1オフ放置 2号ポンプ漏電/過負荷、ブレーカ2オフ放置 水位レベル:L,M,H,HH ポンプ故障:P1浸水、P1過熱、P2浸水、P2過熱 予備警報1/パルス入力1、予備警報2/パルス入力2(ソフト切替) |
電流入力 |
・電流センサー入力2点 U-RD社製 CTL-10-S50-30F-CL2/CTL-16-CLS(最大100A)、 CTL-24-CLS(最大300A) (レンジはソフト切替) ・汎用アナログDC0-5V入力として追加1点使用可能 |
|
外部出力信号 |
・P1,P2運転リレー接点出力。電流容量合計0.5Amax ・ヒーター、回転灯用リレー接点出力。電流容量合計0.5Amax |
|
水位計入力 |
・投込圧力式水位計(2線式4-20mA)入力2点。 配線切替で4-20mA入力可能 停電時バッテリー駆動で間欠監視可能。精度±1%FS |
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表示 | LED |
電源(緑)、警報(赤)、通信(緑/赤)、 P1(緑)、P2(緑)、 HH(緑)、H(緑)、M(緑)、L(緑) |
通信 | 省配線通信ポート(RS485、電源入力付) | |
操作 | 予備制御用スイッチ | 予備制御切替スイッチ。通常運用時は「常時」側で使用 |
運転方式選択スイッチ |
8値ロータリースイッチ 0:単独交互自動、1:1号単独自動、2:2号単独自動、 3:並列交互自動、4~7使用不可 |
|
運転時間設定スイッチ | 16値ロータリースイッチ、1目盛り30秒 |
4.2. 外観・接続
(1) ポンプコントローラ情報部 SC350
- 寸法:W174×H174×D69mm(板金ベース部除く)
- 重量:1.8kg(取付金具、バッテリー含む)
(2) ポンプコントローラ入出力部 SC350-IF
- 寸法:W168×H62×D128mm
- 重量:0.7kg
(3) ポンプコントローラ接続概要
- 省配線接続端子により電源情報部と入出力部を接続
- 運転電流入力2点、電圧入力1点
- LTEアンテナ接続
- PLC拡張(オプション):Di64点、Ai8点
4.3. 表示・操作・入出力
ポンプの運転状況、水位レベル、故障状況、コントローラ内部設定などの情報は全て16桁×2行の有機EL表示モジュールに表示される。制御盤ドアを閉じている状態では、有機EL表示はオフする。
4.3.1. LED表示
(1) 電源情報部 SC350
名称 | 色 | 内容 |
---|---|---|
電源 | 緑 |
コントローラ電源が入っている時、点灯 バックアップ電池で稼働中点滅 |
警報 | 赤 | 警報発生時赤点灯 |
通信 | 緑/赤 |
切断状態は消灯、通信回線接続状態は緑点灯 回線接続通信時は赤点灯(データ通信時オレンジ) 通信回線未接続時、圏外:赤点滅、圏内:緑点滅 |
保守 | 赤 | メンテナンス中通報停止。赤点灯 |
自動 | 緑 |
自動運転モードが選択されていれば点灯 遠隔操作による運転実行中は点滅 |
手動 | 赤 | 手動運転モードが選択されていれば赤点灯 |
1号ポンプ | 緑 |
1号ポンプの運転出力がオンで点灯 遠隔強制運転時点滅 |
2号ポンプ | 緑 |
2号ポンプの運転出力がオンで点灯 遠隔強制運転時点滅 |
IOモニタ | 緑 | 入出力モニターモード中点灯(DISPキー長押しでON/OFF) |
設定モード | 緑 | 設定モード中点灯(警報表示長押しでON/OFF) |
(2) 入出力部 SC350-IF
名称 | 色 | 内容 |
---|---|---|
電源 | 緑 | 電源が入っている時、点灯 |
故障 | 赤 | 入出力部に入力されている故障信号入力がONした際赤点灯 |
通信 | 緑/赤 |
省配線通信状態 ・切断状態は消灯、通信回線接続状態は緑点灯 ・回線接続状態でのデータ通信時緑/赤点滅(見かけ上オレンジ) |
停止レベル(L) | 緑 |
水位レベル入力状態 L:停止レベル、M:1台運転レベル、 H:2台運転レベル、HH:異常高水位レベル アナログ水位計レベル検知 圧力式水位計を用い、2線式4-20mAを標準とする。 応答速度は2秒以下 バックアップ水位レベルはフロート式と併用 (別々に検知) フロートによるレベル検知 必要な水位レベルにフロートスイッチ(接点出力)を設置し、 各レベル入力端子に接続する、 入力は閉じたときにフロートがONしていると判断する |
1台運転レベル(M) | 緑 | |
2台運転レベル(H) | 緑 | |
異常高水位レベル(HH) | 緑 | |
1号ポンプ(P1) | 緑 | 運転信号出力時点灯。運転電流が検知できない時点滅 |
2号ポンプ(P2) | 緑 |
4.3.2. 操作スイッチ
(1) 電源情報部 SC350
名称 | 内容 |
---|---|
表示切替 | 通常有機EL画面の表示を切り替える |
警報表示 |
発生中警報、及び警報履歴表示へ画面切替 長押で設定画面へ切替え。設定中長押しで設定終了 |
自動手動切替/カーソル左移動 |
設定画面に切り替えると、カーソル移動用ボタンとなる 設定値操作、保守モード切替 |
1号運転停止/カーソル右移動 | |
切/カーソル上移動 | |
2号運転/カーソル下移動 | |
No.1 非常運転スイッチ |
コントローラによる運転制御ができない場合、 非常運転スイッチをON側にスライドし、 ポンプ運転操作用の電磁接触器をON・OFFするスイッチ |
No.2 非常運転スイッチ | ※発注時2台運転あり、無しの指定が必要です |
備考: ドアを開けた際の操作ロック、ドア不正解放警報検出の解除は「表示切替」・「警報表示」ボタンを同時押しする。
(2) 入出力部 SC350-IF
名称 | 内容 |
---|---|
予備制御 |
通常の自動運転続行が不可能となった場合、 操作パネル上の予備制御スイッチをオンすることにより、 バックアップフロート(HHWLレベル)オンにより起動し、 バックアップフロートオフ後、 運転時間スイッチで設定された内容で制御する |
運転時間 |
「運転時間」スイッチを操作し、30秒刻みで設定する。 30秒~7分30秒の設定可能 |
運転方式 |
予備制御に切り替えた際の運転制御方式を設定する 0:単独交互自動運転 2台同時運転なし交互運転 1:1号ポンプ単独自動運転 2:2号ポンプ単独自動運転 3:並列交互自動運転 2台同時運転あり交互運転 (ポンプ間インターロック時間10秒固定) |
4.3.3. 電源情報部SC350 入出力
(1) デジタル入力端子
Pin | 名称 | 入出力 | 備考 |
---|---|---|---|
1 | COM | ― | 電源が切れていても内蔵バッテリーで継続して監視します |
2 | COM | ― | |
3 | 予備入力 | 入力 | |
4 | ドア閉 | 入力 | |
5 | 避雷器故障 | 入力 | |
6 | 電源異常 | 入力 |
(2) 省配線接続端子
Pin | 名称 | 入出力 | 備考 |
---|---|---|---|
1 | G(電源) | ― | RS485ポート、入出力部用DC電源出力 |
2 | SG(RS485) | ― | |
3 | B(RS485) | ― | |
4 | A(RS485) | ― | |
5 | V+(電源) | 出力 |
(3) リレー出力端子
Pin | 名称 | 入出力 | 備考 |
---|---|---|---|
1,2 | ファン出力 | 出力 | AC200V/1A リレー接点出力 |
3~8 | 未使用(オープン) | ― |
(4) 電源入力端子
Pin | 名称 | 入出力 | 備考 |
---|---|---|---|
1 | E | ― | 3,4pinはSC350内部でショート |
2 | L | 入力 | |
3,4 | N | 入力 |
(5) 非常運転スイッチ出力端子
Pin | 名称 | 入出力 | 備考 |
---|---|---|---|
1 | A01(母線) | ― |
自動運転・手動運転によらず、 強制運転スイッチのON・OFFを出力します 単独交互・並列交互は出荷時指定。 単独交互指定の場合には2つの出力間で インターロックがかかります |
2,3 | EN2(52-1 b接点両端) | 入力 | |
4 | SW2(52-2 コイル) | 出力 | |
5,6 | EN1(52-2 b接点両端) | 入力 | |
7 | SW1(52-1 コイル) | 出力 |
4.3.4. 入出力部SC350-IF 入出力
(1) 外線接続端子
Pin | 名称 | 入出力 | 備考 |
---|---|---|---|
A1 | 停止レベル LWL | 入力 |
外線デジタル入力。入力コモンは内部でショート ※予備入力1,2は設定により、 運転禁止、許可に転用が可能 |
B1 | 入力コモン | ― | |
A2 | 1台運転レベル MWL | 入力 | |
B2 | 入力コモン | ― | |
A3 | 2台運転レベル HWL | 入力 | |
B3 | 入力コモン | ― | |
A4 | 異常高水位レベル HHWL | 入力 | |
B4 | 入力コモン | ― | |
A5 | No.1 ポンプ浸水 | 入力 | |
B5 | 入力コモン | ― | |
A6 | No.1 ポンプ過熱 | 入力 | |
B6 | 入力コモン | ― | |
A7 | No.2 ポンプ浸水 | 入力 | |
B7 | 入力コモン | ― | |
A8 | No.2 ポンプ過熱 | 入力 | |
B8 | 入力コモン | ― | |
A9 | 予備入力1/パルス入力 | 入力 | |
B9 | 予備入力2/パルス入力 | 入力 | |
A10 | 水位計1+ | ― |
2線圧力式水位計用。 電源出力ショート保護回路内蔵 |
B10 | 水位計1- | 入力 | |
A11 | AiG(ASG01) | ― |
Aiグランド(2線式水位計では不使用) ※水位計シールドアース接続禁止 |
B11 | AiG(ASG01) | ― | |
A12 | 水位計2+ | ― |
2線圧力式水位計用。 電源出力ショート保護回路内蔵 |
B12 | 水位計2- | 入力 | |
A13 | 中継用予備 | ― | 内部でショート。中継用予備 |
B13 | ― | ― | |
A14 | 回転灯出力 | 出力 |
パトライト(回転灯)出力 警報定義内容に従い、回転灯出力接点がオンする ヒーター出力 コントローラ内部温度センサーで温度を検知し、 ヒーター出力接点を開閉。 B14,B15は内部でショート。AC250V/0.5A |
B14 | 回転灯・ヒータコモン | ― | |
A15 | ヒーター出力 | 出力 | |
B15 | 回転灯・ヒータコモン | ― | |
A16 | No.1 ポンプ運転出力 | 出力 |
・ポンプ運転出力 レベル情報を元にポンプ運転・停止信号を出力、 マグネットコンタクタを操作する。 B16,B17は内部でショート。AC250V/0.5A |
B16 | COM(A01C) | ― | |
A17 | No.2 ポンプ運転出力 | 出力 | |
B17 | COM(A01C) | ― | |
A18 | A02C(中継用) | ― |
AC200V母線中継用 ※内部でショート。 盤内の操作線中継用端子として使用 |
B18 | ― | ― |
(2) 省配線接続端子
Pin | 名称 | 入出力 | 備考 |
---|---|---|---|
1 | G(電源) | ― |
電源情報部と接続し、通信を行う端子台 DC24V電源も合わせて入力する RS485ポート、入出力部用DC電源付 |
2 | SG(RS485) | ― | |
3 | B(RS485) | ― | |
4 | A(RS485) | ― | |
5 | V+(電源) | 入力 |
(3) 電流入力端子
Pin | 名称 | 入出力 | 備考 |
---|---|---|---|
1 | No.1 ポンプ運転電流(+) | 入力 |
運転電流検知用CTおよび、 汎用のアナログ入力として使用可能 標準のCTは100A/300A選択 |
2 | No.1 ポンプ運転電流(-) | ― | |
3 | No.2 ポンプ運転電流(+) | 入力 | |
4 | No.2 ポンプ運転電流(-) | ― | |
5 | 汎用Ai(+) | 入力 | 汎用アナログ入力へ0-5V/1-5Vソフト設定切替え |
6 | 汎用Ai(-) | ― |
(4) デジタル入力端子
Pin | 名称 | 入出力 | 備考 |
---|---|---|---|
1 | 入力コモン | ― |
ブレーカおよびサーマルから出力される トリップ信号とブレーカON/OFF状態入力用 コモンは内部でショート |
2 | No.2 ポンプ過負荷 | 入力 | |
3 | 入力コモン | ― | |
4 | No.1 ポンプ過負荷 | 入力 | |
5 | 入力コモン | ― | |
6 | ブレーカ2 オフ | 入力 | |
7 | 入力コモン | ― | |
8 | No.2 ポンプ漏電 | 入力 | |
9 | 入力コモン | ― | |
10 | ブレーカ1 オフ | 入力 | |
11 | 入力コモン | ― | |
12 | No.1 ポンプ漏電 | 入力 |
5. 機能概要
5.1. ポンプ運転制御
ポンプ運転制御はポンプ2台の交互自動運転を基本とし、一方のポンプ故障時には他方のポンプ1台で単独自動運転を行います。
(1) 通常運転
手動運転、並列交互自動運転、単独交互自動運転、1号/2号ポンプ単独自動運転を選択します。停止レベルが無い場合にはタイマー運転(軽負荷検知停止併用)を選択します。
(2) 予備制御運転
予備制御回路は通常使用されるコントローラの制御機能が不能となった場合に、予備制御スイッチをONさせることにより、簡易的に最低限の自動運転(タイマー運転)を継続する。①運転モードはロータリースイッチで並列交互運転、単独交互運転、ポンプ1単独自動運転、ポンプ2単独自動運転。時間設定はロータリースイッチで30秒単位、最大7分30秒。
(3) 運転起動方式
a. 壁面スカム付着防止起動
圧力式水位計を用い単独交互運転、又は並列交互運転を行う場合において、運転起動水位(MWL)を変化させることで、壁面へのスカム付着を減少させる。
b. 遠隔操作起動
遠隔からポンプ起動を行う。起動するポンプを指定して起動した後、自動停止条件に合致した時点で停止する。単独自動運転の場合、自動運転指定されているポンプのみ、管理運転の起動が可能。
c. 管理運転(手動)
いずれかの自動運転モード中、水位が停止レベル以上ある場合、操作パネル上の1号ON、2号ONボタンを押すことにより、各々のポンプを起動する
d. 管理運転(自動)
いずれかの自動運転モード中、いずれかのポンプが最後に運転した後又はコントローラ電源オン後①設定時間以上停止状態が継続、②外気温が設定温度以上、③水位が停止レベル以上の条件を満たす場合、次に起動すべきポンプの運転を起動する。
e. 過剰流入検知起動
ポンプ停止中。10秒移動平均(1秒間隔サンプリング)を計測し1分間の水位変動が設定レベル以上に増加した場合、ポンプ起動水位を設定されたレベルへ移動。起動レベルの設定はMWLレベルからの下げ幅を設定(最大250cm、LWLよりも上であること)
5.2. 水位レベル検出
(1) アナログ水位計レベル検知
- 水位計1:ポンプ2台の自動運転制御に使用。圧力式水位計を用い、2線式4-20mAを標準とする。応答速度は2秒以下。バックアップ水位レベルはフロート式と併用(別々に検知)。
- 水位計2:圧力式水位計を用い、2線式4-20mAを標準とする。応答速度は2秒以下。運転許可、運転禁止水位設定が可能。雨水排水ポンプ施設等、排水先の水位により運転制約がある場合に設定。
(2) フロート
必要な水位レベルにフロートスイッチ(接点出力)を設置し、HHWL,HWL,MWL,LWLの各レベル入力端子に接続する、入力は閉じたときにフロートがONしていると判断する。HHWLはバックアップフロートとして、異常高水位警報、予備制御運転処理に使用される。
5.3. 警報項目
① ポンプ故障関係
- 1号ポンプ漏電、過負荷、浸水、過熱
- 2号ポンプ漏電、過負荷、浸水、過熱
- 1号ポンプ軽負荷注意、過負荷注意、長時間運転
- 2号ポンプ軽負荷注意、過負荷注意、長時間運転
② 水位レベル関係
- 異常高水位(水位計)
- 異常高水位(フロート)
- 2台同時運転レベル
- レベル異常
- 水位計断線
③ 電源関係
- 電源異常(停電、逆相、欠相一括)
- コントローラ電源断
- 電池異常
- 動力用避雷器故障
④ ヒューマンエラー関係
- ドア不正開放
- ブレーカー1断放置
- ブレーカー2断放置
- 手動放置
- 電源断放置(警告)
⑤ 運転診断関係
- 待機時間上限注意
- 稼働率上限注意
- 始動間隔下限注意
- 始動回数上限注意
⑥ 期間警告関係
- 交換時期注意1
- 交換時期注意2
- 運転機器1メンテナンス時期注意
- 運転機器2メンテナンス時期注意
⑦ その他
- メンテナンス中
- コントローラ温度異常高
- コントローラ温度異常低
- 遠隔操作中注意
- 通信異常
- リアルタイム受信異常
- デバイス異常
- 拡張ポート通信異常
- 拡張デジタル入力各警報
- 拡張アナログ上下限各警報
- 予備警報1、予備警報2、予備警報3
5.4. 異常発生時の制御
(1) 三相3線200V 欠相、逆相、電圧低下(停電)検知
盤内電源管理ユニットから電源異常をコントローラ情報部に入力。異常発生時、通報すると共にポンプを強制停止する。
(2) コントローラ入力電源電圧低下時
- 電源電圧が低下した場合にはコントローラは制御電源断状態と判断し、バックアップ電池による動作に切り替わる
- 電源が断たれた状態でもドア開閉信号は1秒間隔で監視する。水位、電源異常、避雷器故障入力は、自動的に間欠監視へ移行し、それ以外の入力部の情報は固定される
- 電源異常入力がONしていた場合には、設定された検出遅延時間経過後、通報を行う
- 電源異常入力がONしていなかった場合、コントローラ電源断検出遅延時間後通報を行う
- 電源異常を検出した場合、運転時間、アナログ積算等積算すべてを停止する
(3) 異常高水位
HHWLフロートと、水位計で設定されたHHWLレベルを分けて検知する。この2つの信号のいずれかがオンした場合に異常高水位(満水)が発生したと判断し、別々の警報として通報され、同時に満水時強制運転を開始する。
(4) レベル異常検出
各運転モードで使用するフロートのオンオフ状態に矛盾が発生した場合、検出と同時に通報する。レベル異常警報は、フロートの矛盾が1つでも発生した時点で発生し、全ての矛盾が解消された時点で復旧する。レベル異常発生中であってもバックアップフロート(HHWL)がオンした場合、満水時強制運転(タイマー運転)が起動する。
(5) 2台同時運転検出
2台同時運転警報は、実際に2台運転している期間だけ発生する。異常高水位警報が発生する前に予備警報として知りたい場合に警報として設定する。制御は通常の並列交互運転を継続する。
(6) ポンプ過負荷注意・軽負荷注意検出
ポンプ過負荷・軽負荷検出はポンプ保護などの目的から、あらゆる運転において機能し、ポンプ運転電流が設定値以上(設定値以下)になった期間が設定時間継続した時点で警報を発報する。2台交互運転制御において、過負荷運転が検出されると、移行運転を行う。移行運転の繰り返し回数は5回。
(7) 長時間運転検出
長時間運転検出はポンプ保護などの目的で、ポンプが継続して運転している時間が長時間運転設定時間に到達した時点で警報を発報する。長時間運転はポンプごとに監視。2台交互運転制御時に、長時間運転が検出されると移行運転を行う。移行運転を5回行った場合、フロート・水位計の故障に起因するものと判断し、一旦移行運転プロセスを終了。HHWLレベルに到達すると運転を開始する。
(8) ドア不正開放警報検出
ドア開閉時、開閉記録を残すと共に担当者以外のドア開放を抑止するために警告し、既定の操作が行われなかった場合、通報する。この際、操作ボタンはロックされたままとなる。
(9) ブレーカー1,2オフ放置
扉を閉めた際、ブレーカーがオフ状態のときブザーを鳴らして警告する。一定時間経過しても扉が開けられない場合は、警報として通報する。
5.5. 警告
(1) 制御電源断放置警告
扉を閉めた際、制御電源が切れている場合、ブザーを鳴らして警告する。盤の電源異常でなくコントローラの電源のみ切られている場合は、コントローラ電源断警報として通報される。
(2) メンテナンスモード放置
メンテナンスモードの状態(保守ランプが赤点灯)で、扉を閉めた際にはブザーを鳴らして警告する。一定時間経過しても、通報は行わない。
(3) 手動放置
手動運転モードの状態(手動ランプが点灯)で、扉を閉めた際にはブザーを鳴らして警告する。一定時間経過しても、通報は行わない。
(4) メンテナンス時期
コントローラ通電時間を積算し、総通電時間を元に定期的にメンテナンスが必要な機器の、メンテナンス時期を通電時間であらかじめ登録することで、時期到達時に通報し、メンテナンスを促す。(対象機器:FAN、電池、1号ポンプ、2号ポンプ)交換時期は設定により変更が可能である。
5.6. メンテナンス時の動作
- [表示切替][警報表示]同時押しで保守モードへ切替。同じく同時押しで解除するか、又は12時間が経過した場合、自動解除する
- 保守モード中は保守ランプが点灯する
- 保守モード開始時、及び終了時、瞬時値データをサーバーへ送信する
- 保守モード中は、警報検出・記録処理は行うが、通報は行わない
- 保守モード中であっても、リアルタイム通信(オプション)は継続する
5.7. 記録機能
コントローラは情報部に不揮発性メモリーを搭載し、ロガー機能を標準で提供する。一定期間現地で記録保持し、長期間記録が必要な場合はサーバーに蓄積する。電源が断たれた場合でも、停電バックアップ中は継続して記録します。
(1) 設定記録
設定値、総運転時間、警報履歴、各種トレンド記録など現場ポンプ施設特有の設定情報は情報部が保有し、最新情報をサーバーと共有する。
(2) 運行履歴
各種デジタル項目を秒単位で検知し1日最大3000件記録する。コントローラでは100日分の暫定記録を保持し、サーバーからの指定に応じて送信する。長期間記録はクラウドにて行う。
(3) 警報履歴
警報検出内容を画面に表示するために最大99件内部記録する。警報表示ボタンを押した際には、現在の警報発生状態を表示する。複数件数発生している場合には最も新しい警報を表示する。過去に警報した警報を知りたい場合には、上下ボタンを押すことにより、過去の履歴を表示することができる。長期間記録はクラウドにて行う。
(4) 運転電流記録
運転出力をONした直後に記録開始し、ポンプ2各々の運転電流を1秒サンプリングで最大10分間記録する。過去5回分の運転時と前回故障時の運転電流記録を残す。(停電し、バックアップ電池も放電した場合は消去される。)
(5) アナログトレンド記録
アナログ信号の値は1分毎に収集され内部に蓄積される。100日分の暫定記録を行い、長期間記録はクラウドにて行う。水位計入力は停電中であってもバックアップバッテリーを電源として間欠監視され記録を継続する。
(6) 積算パルス入力
予備警報入力をパルスカウント入力として利用可能。日報内に1時間ごとに記録される。(パルス幅1秒以上)
(7) アナログ入力
コントローラ入出力部で標準的に装備しているアナログ入力は運転電流センサー1、運転電流センサー2、汎用アナログ入力(漏れ電流センサー入力兼用)、内部温度、水位計1・2(2線式、4-20mA入力兼用)の6点。
センサーの応答速度は、温度センサーは30秒前後、その他のセンサーは1秒前後。運転電流を除くアナログ入力は1秒単位で最大・最小・平均を内部演算し記録され、その結果は日報データとして参照可能。
6. 画面表示
16ケタ2行のアルファベットカナ文字表示可能な有機EL表示画面で、以下の項目を表示する。
(1) 通常表示
通常状態で、表示切替ボタンを押すことにより画面表示は以下の順で遷移する。最終画面の次は最初の画面に自動的に戻る。
①ポンプ運転状態、②ポンプ負荷率、③ポンプ総運転時間、④ポンプ稼働率、⑤総通電時間積算、⑥水位、⑦現在時刻、オプションで温度 (内部)、温度・湿度(外部)、漏れ電流、積算値1、積算値2を表示する。
表示例)運転状態表示画面
項 | 画面名称 | 表示メッセージ | 備考 |
---|---|---|---|
1 | 交互自動運転時 |
■P1:22.5A [AT] ◻︎P2: 0.0A 1.25m |
水位計あり 1号ポンプが運転している例 |
2 |
■P1:22.5A [AT] ◻︎P2: 0.0A |
水位計なし 1号ポンプが運転している例 |
|
3 | 手動運転時 |
◻︎P1: 0.0A ■P2:10.2A 0.41m |
水位計あり 2号ポンプを「手動」で運転の例 |
4 | 1号ポンプ単独自動運転 |
■P1:35.3A [P1] ◻︎P2: 0.0A 0.80m |
水位計あり 1号ポンプを「単独自動」で運転の例 |
5 | 2号ポンプ単独自動運転 |
◻︎P1: 0.0A [P2] ■P2:35.2A 9.99m |
水位計あり 2号ポンプを「単独自動」で運転の例 |
表示例)水位がマイナスの場合の表示(水位計の校正が必要)
項 | 画面名称 | 表示メッセージ | 備考 |
---|---|---|---|
1 | 通常表示画面 |
P1: 0.0A [AT] P2: 0.0A -*.**m |
手動モード/自動モード、レベルの判別はLEDで行う (□は運転時リバース表示) |
2 | 水位表示 |
スイイ -*.**m (***)% |
水位計制御の場合のみ表示 |
(2) 警報表示
最近発生し現在も継続中の警報、過去の履歴を最大99件表示する。
(3) 設定画面
設定分類は大きく以下の4種類に分類され、選択後それぞれの詳細設定が可能です。
①システム設定、②時間関係設定、③警報関係設定、④その他設定
※詳細は取扱い説明書を参照。
7. 通信概要
7.1. 省配線通信
DC2電源付RS485通信ポートを使用し、電源情報部と入出力部間の情報授受を行う。停電中は2分毎に情報を取得し通信、記録する。標準で24時間以上、監視を継続する。標準バッテリーの代わりに、バッテリーを増設接続し2分間欠で最大7日間水位監視を継続可能。バッテリーはDC12V規格のリン酸鉄リチウム電池(BMS内蔵品)を使用する。
7.2. 携帯電話網パケット通信
クラウドネットワークはLTE-M携帯電話網を利用した閉域網ネットワークを使用する。最短3秒に一回のリアルタイム通信も可能(オプション)。
現場状況はスマートホン、タブレットなどのモバイル機器、インターネットに接続されたPCなどでクラウド経由で監視可能。トレンドグラフ、運行履歴などの機器動作状況の記録および現在の状態を把握することができます。
7.3. PLC拡張通信
拡張通信ポート(RS232C-1)経由で外部のPLC(オムロン)と通信し、拡張デジタル入力(最大64点)、拡張デジタル出力(最大8点)、拡張アナログ入力(最大8点)を使用可能。